コンプレックスとモノの見方
- 作者: 藤谷治
- 出版社/メーカー: ジャイブ
- 発売日: 2008/10/01
- メディア: 単行本
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一方、人物描写がややもするとステレオタイプに陥りがちである。同性である主人公に気があるらしいフルートの美少年とか、恋人との思い出がある曲を弾くときに感情をあらわにする、普段はクールな美人教師とか、ヒロインである美人の親友のために嫌な役まわりを背負う三枚目少女とか(この子は救われないんだ。今のところまぁったくいい目を見ない)、何か今ひとつ感が否めない。
たとえば「がんばっていきまっしょい」は主人公の屈折ぶりにとても共感できたし、味のある脇役が多かった。多分、敷村良子がコンプレックスに満ちた高校時代を送ったからそういう小説が書けたのかなと思うのだけど、だとすると、藤谷治はラノベのキャラクターみたいな連中に囲まれて青春時代を過ごしたんだろうかと想像してみたり。
ここまでくさしておいてふと疑問が湧くのである。
藤谷治的高校生描写にシンパシーを感じる人も多々居らっしゃるのかもしれない。というかそういう方が大多数だとしたら?僕的高校生活がバックグラウンドにあるせいで、藤谷治的スクールライフに共感できないのだとしたら?僕がこの小説を評価するに値しない青春時代を送ってきたせいで正当な評価が出来ないのだとしたら?(両手で耳を押さえてああああああ・笑)
鷺沢萠的スタイリッシュ・キッズはきっと松村栄子には書けないし、村上龍的限りなく透明に近いブルーは半村良には出せない青だ。結局読者は感覚的に寄り添える作者の世界にしか行き着けないし、一読者の視野はあまりに狭すぎて視界から外れた部分の評価は覚束ない。デス・コミュニケイション。
- 作者: 敷村良子
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 1996/07
- メディア: 単行本
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