ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

2012-01-01から1年間の記事一覧

FM81.7「ひみつ基地」放送。

みなさんどーもお久しぶりです。中目黒君は年末年始の長期休暇を利用して家族とグレートバリアリーフに行ってしまっているので、今年はひとりの放送です。 今年は何といってもスキーで起こした頸椎および胸椎の骨折騒ぎがトップニュースです。生まれて初めて…

剛田派宣言・あるいはマヤ暦の向こう側。

練馬区某所の空き地に集まる人々。積み上げられた土管の上には旗竿が立ち、黄色地にオレンジの稲妻のシンボルが入った旗が翩翻としている。 やがてひとりが立ち上がり、旗竿の下で胴間声を張り上げた。のび太くんは歳をとりません。何故か。いうまでもなく、…

はつこい。

一本棹の舟を操って、阿螺川を横切る。セイタカアワダチソウの群生のなか、ひとところだけミヤコアシが茂っているのが入り江の目印だ。水面を漂うペットボトルや藻に覆われた人形を掻き分けて、舳先を茂みに突っ込むと、魔法のように舟は茂みを通り抜け、船…

フラッパーズ。

Kはフラップバッグ・ファンである。鞄の片側に蓋が垂れる、あれである。デザインがプリミティブになるのがいいんだそうだ。「ジッパーが上に何条も走っているビジネスバッグなんてゴメンだ。品川駅じゃあるまいし」というのが、日本酒を4合ほど空けたKの、…

ひみつ基地300日目。

200日を2年前の9月末に記録してから、2年かけて100日が経過しました。引き続き淡々と綴っていきます。 −木下未来と仲間達より。

熱帯夜。

深夜1時の立体駐車場。通路の両脇にはアヌビスの彫像のように整然とうずくまる車達。神々の眠りを妨げないように足を忍ばせて歩いた。 レガシィのエンジンを始動し、アクセルを緩く踏み込む。セカンドでエプロンから滑り出て、中山道に合流すると、スカイラ…

晩夏ランブリング。

訳の分からない指示を出し、職場を混乱に陥れる。話し合いの内容を3割しか記憶せず、それを基に話すと相手に2割しか伝わらない。そんな上司を、木下は苦笑いしながら「ぬえ」と呼んでいる。 蝉も鳴き嗄らす水曜日の夕方、ぬえ対策にアタマを抱えていた木下の…

サマータイム・ブルース。

通院で切り刻まれた木下の夏期休暇は残り2日で、CTの画像を診ながらうーん、と唸っていた医者が、次は11月にいらっしゃい、と告げるに至って、やっと好きに使えることが確定した。 自由な時間を手にしてみれば、さて何をするか考え込んでしまう。自転車の遠…

髪を切る。

世の中はオリンピックだという。 金曜日の夜は粘っこいクライアントとの折衝のあと、志摩に呼ばれて新宿センタービルの銀座ライオンでビールをいただいた。 疲れていたので早めに切り上げ、むしむしした大気の中泳ぐように板橋物置部屋に帰ってきた。スーツ…

戸惑いの午後。

外に出たら夕焼けだった。 本社で打合せが終わったのが17時、昼ご飯を採り損ねた胃袋は海産物を要求していた。馴染みの寿司屋が開く時間には早い。馴染みでない寿司屋には入りたくない。あまつさえ区部北辺の職場には残業が控えていて、新宿を彷徨(うろつ)…

愚者の特効薬。

7月11日に病院に行ったところ、予後順調とのことで、なんとコルセットもカラーもとれてしまった。夏の終わりまで甲殻類的生活を我慢しなければいけないとの見込みだったのが、1ヶ月半の前倒しである。うれしい反面、何もスケジュールしていなかったので、三…

りはびりていしょん。

長い、長いながいながい休暇を明日終える。 入院中、思いの外お見舞いを戴いてしまいました。自分が見捨てられていなかったことにほっとしつつ、また構っていただけることを感謝しつつ、お見舞い返しを段取ってみたところ、締めてン十万円。こういうところは…

帝都徘徊再開(おそるおそる)。

ちょっと木下先生、大丈夫なの?とは小函さんの第一声だ。久しぶりの「あぶらつぼ」は相変わらずの閑古鳥で、入り口脇の水盤に冷やしてある瓶ビールが客待ち顔だった。あらあら、そんな風でお運びいただいちゃって、大丈夫だったのかしら。もう馬場崎さんは…

自転車に乗りながら聴くことが出来るなら。

Lamp。染谷大陽くんが自分たちの音楽を「おしゃれ」だとか「カフェ・ミュージック」だとか評価されるのを、自分たちが表現したいものの表層しかすくい取ってもらえないとフンガイしている*1のが好きです。最新アルバム(といっても1年以上前)に富田ラボがコ…

ソロー的隠遁譚。

梅雨の合間の晴れた日の夕方、こっそりと屋上に上る。暑くなく寒くもないいい季候で、帝都は一日を締めくくろうとする夕暮れ的活気をここまで響かせてくる。折れた骨を気遣いながら、あぐらをかいて背伸びする。コルセットが音を立てる。 テレビを観るのをや…

主婦的自炊生活。

自宅療養を言い渡されたものの、コルセットとカラーをつけている以外は普通に日常生活を送ることができる。朝起きて筋トレ*1をし、ランは無理なのでウォーキングにでかけ、4.5kmを50分くらいで歩いてみて、戻ってもまだ出勤時間には間があるような時刻で、朝…

あぶのーまる・ばけいしょん。

頸椎の固定も上手くいってるし、ま、いいでしょ、と主治医が退院許可を出した。ただし、数週間は自宅療養すること、という条件付きで。 「ふーん、いいご身分ですねぇ」と、ワイシャツに黒のチョッキを羽織った中目黒君は枯れかけた見舞いの花を千切っている…

たとえばこんな自転車旅行。

ひねもす病院のベッドに寝転んで鼻毛など抜いていると、旅に出たくなる。窓の外は初夏のチェレステ・ブルーの空。カーテンを揺らす風は新緑の香り。手元に目を遣ると、旅行用の最小携行品バッグがある。とりあえずこれだけあれば、突発的旅行に出ても困らな…

冬への扉。

今日はつらつらと手術の説明を聞いた。避けようのないリスクについて覚悟をせまる内容で、能動的回避策なり別の選択肢の提示なり、クランケが主体的に生存可能性を上げる行動に繋げられる情報ではなかったので、知識として興味深い部分をしっかり吸収して(…

あなたの物語。

点滴。絹ずれ。寝息。ナースコール。スリッパ。ひそひそ声。何かの計測機器が奏でるアラーム。午前2時のHCUは音に満ちている。そんな中、木下未来はスタンドライトに照らされて、規則正しく呼吸を続けていた。表情はなく、ただ機械的に息を吸い、そして吐き…

サーヴィス。

嘘つきでいい加減な人生を送ってきたから、それなりの結果としてここにこうして暮らしている。不満はない。自分の投資に見合った回収ができているか、とか、いちいち気にしていたら、神経衰弱でアルカセルツァーがいくつあっても足りない。自分の一歩一歩の…

木下先生の部屋。

「だ、誰?」 「誰っていうあなたは誰…かと思ったら中目黒君か。どうしたんですかその短髪は」 「あ、木下先生。いったいどこに隠れていたのですか」 「いやちょっと帝健の方がばたばたしていてね。半年ぶりくらいかな」 「多分、それ以上です。もういらっし…

だんだん。

4月1日にはもう、元の生活に戻っていた。地震がくるたびに山鳴りがしていた仮設住宅での2か月は、もう過去のもの。窓さんと毎日出張のときにしていた馬鹿話も、現業さんに「嫁の来手がいなくなるから、大概にしときなさいよ」と大笑いされた手料理自慢も、な…

解任式答辞。

本日、我々帝都計画建設公社沿岸部派遣班は、災害復興支援の任を解かれ、帝都に戻ることとなりました。 もっとも任期の長い者で昨年の6月から、当地に赴任しております。 着任の際、現地を踏査しました折、我々土木の人間が心血を注いで築き上げてきた街が…

さよならさんかく。

木下さん、あのね、と上目遣いに梨元さんが僕に話しかけたのは、松島駅の連絡通路、乗り換えに急いでいる途中だった。 なぜ僕らがそんなところにいるかといえば、これは職場旅行で、しかもそれは東京から鈍行で鳴子温泉に来るという乗り鉄のボスが鉢巻をして…

Life goes on.

窓さんは、僕らの班についている運転手さんだ。ひょうひょうとした物言いで僕らとバカ話ばかりしている。 「ガラス瓶を暖めて、そこに刻んだ葉わさび入れるっしょ」 「はい」 「そこにお湯入れて、間髪入れずにふた閉めると、風味が逃げないのさ。そこにめん…

凍結世界/海草世界。

前日までウォッシャー液を不凍液にしたり、チェーンを装備したり、寒冷地化されたレガの最後の仕上げにラッセル用のスコップを放り込んで、準備は完了した。 次の日、朝2時にレガに火を入れて出発。3時に虫掛君と合流。後はひたすら運転。折からの寒波は日…

ノンデルとグレテル。

青猫は今日も、玄関から出かける後ろで壁にもたれかかり、黙って見送っている。 ここ一週間ほど、自転車通勤をしていない。理由は簡単、道路交通法第65条第1項に違反するわけにいかないからだ。つまり、呑んでる。一週間ほど連続して。 件の出張は年度末にチ…

そのボリュームで。

水曜日の夜である。 新宿駅南口から鉄道省本部の黒々したビルの足元を鼠の足取りのように細々と代々木方面に抜ける路地がある。バラック然とした家屋の軒が覆い被さるようなその小路を稲妻型に抜けようとするとかならず躓く防火用水のバケツがあり、なんだよ…

スノウ・パラダイス。

滑走日数11日目@尾瀬岩鞍。 節電と、昨年の台風で一部崩落箇所があることから尾瀬開発株式会社は西山*1の閉鎖を選んだ。結果、例年ぶなのきに張り付いていた連中は他コースに散った。あるものはエキスパートコースに行き、またあるものは国体男子コースに向…