ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

休みの日は自転車に乗って

日曜日のこと。
朝9時にと新宿で待ち合わせる。輪行のレクチャー以来、自主練でパッキングはこなせるようになった、という話は聞いていたのだけれど、パッキングした自転車を持って電車に乗って移動するというのはやってみないとわからない面倒くささなので、どうかなーと千尋の谷にわが子を突き落としたような感覚で待っていると、電話がかかってきた。
「おはよーございます木下さん、新宿に着きました」
「お、無事なのね。大変だったでしょう」
「すっごく大変でした」若干涙声である。「大江戸線輪行にやさしくない線だということがわかりました。東中野で乗り換えたんですけどね」
「まってね。僕今パッキングしているところだから」
「え、どこでやってるんですか」
「御苑口」
三田線から巣鴨乗換えをして新宿っていうのが耐えられなかったので、板橋から自走してきてしまったのでした。ただ、パッキングに要する時間は10分程度。分解梱包のスピードには自信がある。
「おまたせ。おーすごくきれいにまとまってんじゃん!」
「そーでしょー?まだ4回しかやってないですけど」
「素晴らしい。渚、君には才能が…」
「さ、行きましょう。電車に遅れてしまいますぅ」
湘南新宿ラインに乗って、一路鎌倉へ。紅葉のシーズンが来ているかも、という円覚寺狙いのツーなんだけど、それ以外のルーティングも含めてべたべたの観光コース。ええそうですとも。僕は助平のヒヒ爺ですが何か?
鎌倉駅前で荷ほどきをして、青猫を組み立てる。パッキングを解くとエンド金具*1が珍しく機能しているので満足。渚はと見ると、綺麗にストラップでタイヤをまとめてある。こいつ、存外化けるかもしれん。
円覚寺で期待していた紅葉はまだはやく、しかし富士山が綺麗に見える相模の国の平和な秋の風情を存分に楽しみ、建物に入るたびに構えてある賽銭箱にお賽銭を入れるかどうかでひとしきり口論し、甘酒を飲んで、次は鎌倉の大仏に。陽に照らされた大仏の体内が温かくて、二人で顔を見合わせて笑う。
そこから洋食屋でご飯を食べ、134号線沿いの海岸でサーファーを眺めながら学生の時にやった深夜徘徊の話しで盛り上がり、最後鶴岡八幡宮で締めて全行程終了。
「なんか歩いた時間も侮れないくらいありましたね」
「確実に、筋肉痛になると思うよ。そして渚、君ちょっと日焼けしたな」
薄い紅色を掃いたみたいに、頬がほんのりと焼けている。
「ああぁぁぁ、美白を一からやり直しです」と肩を落としつつパッキングする渚。輪行袋を自在に操る女子って格好良い。
「渚、僕今惚れそうになったぞ。やっぱり才能が…」
「あ、木下さん電車電車、はやく乗らなきゃ!」

*1:リアのディレイラーを守るためにフレ−ムのエンドにつける金具。上手く固定できたためしがない。