ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

新機種導入要求書。

機種:ロード
使用別:サーキット・ヒルクライム
用途:エンデューロレースおよびヒルクライムレースにおける成績の向上
座席数:1
特性:廉価かつ軽量にて他競技者の殲滅に優越すること
航続力:正規満載時全力4時間
装備:shimano105以上の等級の変速機を搭載すること

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木下は決済した書類を持って、軍令部に向かった。本庁から上申を回してもらおうと思ったら断られてしまい、合同庁舎5号館の二部三課に直接提出である。通常このあたりは帝都公安本部か合同庁舎3号館くらいしか用がないので、勝手がわからず辟易する。
「木下准尉じゃないか。貴様いったい何をしている、こんなところで」
「ああ、恩田少尉。久しぶりだな」聞けば恩田少尉も兵站について軍令部に調整にきたとのことである。
「どうだ恩田少尉、時間があれば一杯」
「おっ、いいね。昇進祝いも未だだしな」
日比谷公園を抜け、新橋の中華料理屋に行く。豚足を肴に、紹興酒の瓶を封切ってもらい、二人で飲み始めた。土曜日のまっ昼間、店の主人は、本日はあついですからな、といいながら人通りの少ない路地に打ち水し、縁台に座るように勧めてくれた。
「何だ、新機種導入するのか。青猫はどうする」
「青猫は通常の通勤とロングライドに使おうと思っている。何せ、頑丈で壊れないからな。今欲しいのは競技用の機材さ」
「フルカーボンにしろよ。軽量でいいぞ」恩田少尉は年末にLOOKのフレームを買い、自分でコンポを選んで一台くみ上げたばかりである。
「うーん、そのつもりなんだがね。とにかく予算の制約が厳しくてな」
「どの程度だ」
「いいところ20万円くらいだろう」
「候補は」
「FELTのF5とGIANTのTCR COMPOSITE SEかな。あとは検討中だが」
「DEDACCIAI STRADAのNERISSIMOも候補に入れたらどうだ。評判はいいぞ」
「あのチューブ屋のか。いいんだが、24万くらいするだろう。それだったらKUOTAのKHARMA105も候補に入れたくなる」
「まあ、いろいろ検討して見ろ。今年はレースには出るのか」
「ああ、去年のFISCOエンデューロレースと龍勢ヒルクライムに加えて、今年はツール・ド・能登にエントリしようと思っているんだ」
「あれ、3日間かかるぞ」
「前乗り込みと競技後の帰都時間を加えると、5日間くらい必要になりそうだよ」