ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

クローム都市

ビルの屋上から東京の街を見下ろす。

莫大なエナジーの消費を表す赤や青のネオンに照らされた五月の細かい雨が風にあおられて軌跡を曲げるのが見える。それが空気の流れを教える。
濡れた車のボンネットが妙に生々しくネオンの光を映す。雨に濡れた街は妙にきらきらとして、まるでクロームメッキを施された作り物のようだ。
重量感が無くペナペナした東京の都市空間は病んでいる。自らのパーソナリティを否定し、無国籍なファッションに身を包み、無国籍な言葉を吐くこの街の人々が不安定な精神と不安定なスタイルに基づいた不安定な都市環境を生み出す悪循環には正直うんざりする。
しかしふと気づけばそんな東京にパラサイトしている。
都市を楽しみ、都市を笑い飛ばし、都市をすり抜ける。友達とスクラムを組み、ビールを浴びるようにのみ、網の目のように広がるメトロとタクシーで東京を泳ぐ。
このファナティックなゲームには終わりがない。

雨で煙った風景の中、ゆっくりと点滅する航空灯をまとった高層ビル群を眺めながら、ウィスキーを嘗める。高層ビル群の向こうには東京タワーがひかる。
「此処にいたければ何とか勝ち続けなければいけない」とクローム都市がささやく。その方が苦痛が少ないからだ。ルールに慣れさえすればゲームを続けることはそれなりに楽しい。

そして、僕はまだ泳ぎ続けている。

いやあ、まさかこんな古い日付に記事をエントリできるとは思いませんでした。タイトルはアポロ11号が月面着陸したときのアームストロング船長の無線送信です。そう、'69年7月20日は人類が初めて月面に降り立った記念日です。