ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

豚を盗む

全然進まないプロットながら、いつかは書き上げたいと思っている文章のコア。

酒の入った男は語り始めた。以下、メモ。
俺たちは生きるために豚を盗まなくちゃいけない。理不尽であるとか、スタイルに合ってないとか、そういう個人の感情とは関係なく、豚を盗まなくちゃ生きていけないんだからな。そういう貸借関係でできあがっているんだ、この世界は。そして俺もおまえも選んでそういう世界に入ったんだ。いや、選んだんだよ。今ここにこうしてあるということ、それこそが証拠だ。
ひとりで旅してる奴は、そうである理由が必ずある。
大体、ひとり旅をしている人間は弱い。だから祈りながらファームに向かっているんだ。今度こそ豚が盗めますようにってね。そんな祈りって切なくて儚いだろ?だから自分が情けなくなるし、悲しくなってくる。すべて捨てたくなる。その方が気持ちがすっきるするんじゃないかと思い始める。今すぐにやめてしまおう、豚を盗むことに何の意味があるんだってね。
群れを作ることでそういうやり切れなさをごまかす奴らだっている。たいていそういうのは、目的と手段をすり替えちゃう奴らだよね。そういうふうに惰したくないから、俺たちはひとりだ。だから強くならなくちゃいけない。けど強くなりきれていないから悩む。悩みながら歩を進める。
だから青年、おまえが旅しているとき、孤独な旅人とすれ違ったら、挨拶してやってくれ。ちょっと手を挙げるだけでいい。それで十分通じるんだ。

青年にはよくわからなかった。旅人がみんな祈りながら移動しているだって?まるで豚を拝みに巡礼しているみたいじゃないか。豚を盗めるかどうかはテクニックとタイミングだ。だが、黙ってうなずいた。