ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

木下先生の部屋

「先生、また休日出勤ですか?」
「ああ中目黒君こんにちは。一昨日誕生日だっけ?おめでとう」
「ありがとうございます。26歳になりましたよ」
「一人でお祝いですか。っていうか、最近見ないね」
「そりゃ僕だっていろいろ忙しいのですよ」
「へー。たとえばどんな風に?」
「夏休みですからね、まあ、いろいろ」
「…」
「…」
「…中目黒君、答えになってないよ」
「みなまで言わせる気ですか先生」
「まあいいや。充実しているんだけど、まだ公言するほどしっかりしたカタチを取っていない何某かに取り組んでると、こーゆーことでいいんだね中目黒君。で、どんなタイプの子なの」
「…先生って、つくづく夏向きの性格じゃないですね」
夏期休暇を消化しないままここまで来てしまった。何に使おうかなといろいろ逡巡したのだけれど、考えてみれば資格試験が近い。取る取るいいながら幾星霜、全然真面目にやっていなかったのだけれど、しばらくぶりに問題集とか過去問とかをいじくり出すと、それはそれで面白い。木下一族はアカデミック家系なので、ひとつのことをじっくり考えたり、興味のあることを整理したりするのは実は好きです。そこ、笑わない。
正直、退屈だとか倦んでるとか、がたがた抜かしている自分こそが鬱陶しい。たまに自分が被っている薄汚れた膜みたいなものを振り払って、綺麗にすがすがしく行こう!と思う。ええそのとおり、幻想ですよそんなの。知ってるって。でも小利口にアンニュイしている自分が本当かといえば、そうじゃないんだよなー。御託並べるならやってみせろって言われたら、喧嘩上等、受けて立とうじゃないの。
ここはひとつ、びしっと決めていこうと思いまっす。
「先生?」
「ああごめん、ちょっと考え事をね」
「金だらいに氷水入れて、毛ずね突っ込みながら白昼夢見ないで下さいよ」