南極料理人
先週日曜日、池袋のシネリーブルにて観てきました。客の入りはそこそこで、公開してから2ヶ月たった映画の割には盛況なんじゃないでしょうか。
まず第一に、料理の表現が秀逸です。音がね、良いのよ。フライにナイフを入れるときのさくっと感とか、おにぎりを握るときのもちゃもちゃ感とかがすごくよく録れていて、これは「かもめ食堂」とかに通じるものがあると思って調べたら、やっぱり飯島奈美が絡んでいて、「めがね」と同じく榑谷孝子とのコンビだった。この2人、どういう役割分担で映像に拘わっているんだろうね。飯島さんはフードスタイリストで、榑谷さんはフードプランナーだという。字面だけ見ているとよくわからない職業の2人だけど、撮影や録音のスタッフは「南極料理人」と「かもめ食堂」では共通項がないので、やっぱり料理映像の良さはこの2人の仕事が効いているということでしょう。
映画の構造としては堺雅人の台詞にあるように「美味しいもの食べると元気が出るでしょ?」っていう話で、そうなると南極観測の日々の困難ぶりと、元気が出る料理シーンのコントラストをどうつけるかっていうところにストーリーを収斂させていけば良いんだけど、あまりシリアスな場面がなく、それがシーンの日常感にも繋がっていて、これはこれでよいと思いました。エピソードの裏にはシリアスな実情もあるんでしょう、という匂いは残しているあたりのバランス感もよかった。400日以上極寒の地に閉じ込められて、白夜やら極夜やらで閉塞感に苛まれたり時間感覚が狂ったりして、精神的に参ってしまう人がいる状況は、やっぱり大変なんでしょう。それをガリガリ描いてしまうとご飯とその周辺が持つ優しい雰囲気も勢いタフでハードなものになりかねないので、映画で描いている緩さは考えられたものなんだと思います。
ドキュメンタリーとしての元ネタがどんな内容なのか、どれだけ映画で脚色されているのかっていう方に興味が沸いてきました。原作本を読んでみようかな。
- 作者: 西村淳
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/09/29
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