ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

おっさんの幸せ。

先週のかぐらみつまたでシーズンを終わらせるつもりで、さていつ板をチューンナップに出そうか、なんて思っていたら携帯がう゛ーう゛ー鳴るんである。
「もしもし木下先生」
「なんだ、重先生か。どうしたんですか」
「他に用事があるのかっての。スキー行かないか」
「かぐらでしょう?まだ大丈夫なのかな雪は」
「さては知らないな」
「何を」
「今週、雪降ったんだ」
「行く。行きます」
そんなわけで始まった春スキー行。定宿になりつつある三俣の「ゆのさと」に向けて重先生の車を走らせる。道中、重先生は胡散臭そうな顔で僕を見る。
「木下先生、酒臭いよ」
「いや失礼。実は昨日飲み会でね、したたかくらってしまいました」
「それで遅刻したと」
「面目ない。難しい飲み会だったんだ」
「まあいいけどね。かぐらロープウェイの渋滞に巻き込まれなくて済む*1
ゲレンデに着いたのは10時過ぎ。期待していた雪は20センチくらい降ったらしく、積雪量は充分。早速コブ斜面に向かう。
テクニカルコースの下1/3は一部大きくハゲている。ジャイアントコースの下1/3もブッシュがかなり見えてきている。それでもコブ練習には支障ない。
右カーブが極端に浅い溝が幾筋かあって、何度もリズムを崩して転倒する。
「重先生、何だこれ」
「ボードが入ると、どうしてもこうなるんだ。右ターンはスライドさせにくいようだよ。進行方向に背を向けるのがプレッシャーなんだろう」
「何だかやり辛いな。こんなシオマネキみたいなコブ」
「ま、どういう斜面でも滑れるようになるための練習だと思えばやる気も出る」
たまに休憩を入れながらリフト営業終了時間まで滑り、帰り道。みつまた連絡リフトの前はえらく渋滞している。50分待ってようやく乗れた。
「何だあれは。日曜夕方の関越道じゃあるまいし」渋滞嫌いの重先生である。
「街道の湯*2」に浸かって、宿に戻ってビール飲みつつ山菜の天ぷらをつまむ。宿の若旦那が釣ってきた魚の刺身とホイル焼きもおいしい。ご飯を3杯もいただいてしまった。
女将さんが「すごい部屋だけどごめんね」と言っていた部屋は、昔の下宿みたいな風情の8畳間で、こたつとストーブがフル稼働している。こたつに疲れた足を突っ込んで、缶ビールを空けながら下らない話に興じる。
なんかいいなこういう時間。肩に力が入らないで。
「重先生、働いていてよかったね」
「おっさんのご意見ですな」
「何とでも言いなさい。僕は今、おっさんになって良かったと思っているところだ」
「そうだね」
2日目は朝一番からゲレンデに入る。したたか練習して、帰りのみつまた連絡リフトが混まないうちに15時あがり。来週日曜日もスケジュールが合えば来ようという話をしながらの帰り道。
「あ」
渋滞情報を知らせる電光表示版を見て、重先生はみるみるうちに不機嫌になる。
「やっぱり渋滞してるね」
「何で日曜日の藤岡〜嵐山小川って渋滞するのよ。3車線あるのは伊達か酔狂か」
張り子の虎かはったりか、ウドの大木三年寝太郎…ひとりでテンションをあさっての方向にあげまくる重先生を尻目に、僕は助手席で居眠りを決め込む。太ももの筋肉がダルい。

*1:かぐらみつまたスキー場はロープウェイでアクセスする。この時期首都圏で日帰りできる唯一のスキー場なので、難民化したスキーヤーが大挙して押しかけ、朝はゴンドラを3本くらいやり過ごすのがザラなのである。

*2:かぐらみつまたスキー場利用者で洗い場が軽く渋滞する。