ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

いつか花実の咲く日まで*1。

金曜日のこと、残業していたら電話。
「もしもし木下?」
「なんだ北山か。どうしました」
「御挨拶ね。あのね、ふふ」
「どうしたの」
「転職試験、一次通過しちゃいました」
「おめでとう!」
北山は学究肌の性格が災いして、大学に長く居過ぎ、就職に苦しんでいた。やっと決まった今の職場も契約社員という取り扱いで、へこんだり縮んだりしながら、それでも前向き感だけは失わなかった。その3年くらいの軌跡を知っているだけに、素直にこの報告はうれしい。北山は電話しながら自己採点を見直し始める。
「北山、今僕仕事中だから」
「ああ、ごめんなさい。先輩がこれからイタリアンでお祝いしてくれるって。特需よ、特需!」
二次試験以降も難関が続くの。どうせ落ちちゃうだろうから、今のうちにおごられておくのよ、と上ずった声でしゃべると、北山は唐突に電話を切る。
あるだけの力で当たって乗り越えられればよし、駄目なら泣きべそをかいてもう一度トライする、体育会系の痛快さっていうか、すがすがしさがこの人にはあって、木下一族に巣食うウェットでダルな雰囲気から逃げるのに精一杯な僕には悔しくも眩しく見えたりする。まあ、僕もよしなしごとを考えるくらいなら前に進んでやる!と思うくちで、そのうち花実も咲くのかもしれない。
月曜日、TOEICを申し込んでみた。企業受験なので安い。そして結果が早く出る。前回スキーシーズン中にふらりと受けたときのスコアは550。今回は600を越えられるといいと思う。