ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ。

昨日のこと。
筑波エキスポセンターのプラネタリウムにHAYABUSAを見に行ってきました。内容は子供も観るものだからだろうか、ドキュメンタリーというよりはドラマ仕立てで、もう少し堅い感触のものを期待していた僕には物足りなかったが、プラネタリウム自体が久しぶりだったし、一足早い夏休みの気分を味わうことが出来て満足。TXにも仕事以外で初めて乗った。
はやぶさが帰還したのが6月13日。イトカワのサンプル採取の際に制御不能になるすったもんだがあったり、サマー・ウォーズで「あらわし」としてミサイル扱いされたりして、幸薄い感が強い機械。2007年には戻ってくるはずだったそいつが、途中燃料漏れが生じたり、行方不明になったりしながら、7年もかけて帰って来た。
地上スタッフ達の次から次に繰り出すトラブル対策がもうすごいの一言。スラスターが調子悪くなると、イオンエンジンの推進剤に使っていたキセノンガスを直噴して推進力にするとか、それでも姿勢制御が難しいとなるや今度は太陽風を使って安定させるとか、次々と調子を崩すスラスターの、複数のパーツを繋いでひとつ動く奴をでっちあげちゃうとか、もう叩かれても叩かれてもふらりと立ち上がるボクサーのようである。そのさまはアポロ13と比較されるけれど、ああいう、人命がかかっていて、瞬発力と膨大な組織的体力を活用するマッチョでヒロイックなものではなく、通常研究活動の延長線上にあるちょっとばかしきらりと光る技術の集合体を駆使して安全に安価にミッションを遂行したものであって、別物でしょう。
これは、日本なりの宇宙へのアプローチを示したものだ。今回のミッションをNASAがやったとしたら、もっと膨大な予算をかけて、複数のミッションに分けてやるだろう、という話をどこかで読んだ。
この無人でオートマチックな宇宙へのアプローチは、日本のお家芸になっていくと思う。この間ISSにドッキングに成功したHTVにしてもそうだ。絶対宇宙ビジネスで稼げる、売れる技術になるだろう。それ以前に、これは経済効果で測れる以上に日本の価値を高めた、偉大な仕事だ。
はやぶさやHTVや、ISSに接続されている「きぼう」は地上を這いずり回るいち技術者である僕を鼓舞する。日本がいつまでも技術立国でありますように。そして日本や世界に役に立つ技術や技術者が、今の予算やら政治やら教育環境にめげずに沢山育ちますように。
2005年の年末に通信が途絶したはやぶさが、1ヶ月半たってからかすかなビーコンで地球のスタッフに呼びかける。そのエピソードを訊いて、地球から遙か離れた上も下もない宇宙空間で、コマンドを待つはやぶさを思った。僕の頭の中で、それは主人からの呼びかけを待つ犬を思わせる姿だった。