ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

そんな予感がしてた。

昨日のこと。
美樹武君の入社試験二次突破ということで、志摩と北山と、新宿四是で打ち上げていた。終電近くにお開きとなり、志摩と二人で駅を目指すあいだ、西口摩天楼群の航空灯が脈明するのをアルコールで霞んだ頭でぼうっと見ていた。水蒸気を含んだ空気が吹き抜ける。
「木下ちゃん、随分汗かくんだね」
「うん、最近動くとすぐに汗が出るんだ」
「まあ、ここんとこ蒸すしね」
「それにラーメン喰ったばかりだしな」
志摩とは池袋で別れて、巣鴨に向かう。結局終電を逃して、タクシーで帰宅。テレビをつけると、NHKスターウォーズ特集を流していた。横目で観ながら、イカンここで横になっては、と思いながら床に横たわる。汗が止めどなく流れて床に染みをつける。体調が悪いわけではないけれど、身体が重い。というか、血が重い気がする。ひょっとしたら、ひょっとして、今日明日には…。
明けて土曜日。
タイマーでスイッチが入るラジオがニュースを流し始めて、目が覚める。時計は8時を示していて、J-WAVEは関東の梅雨明けを知らせていた。やっぱりそうだ、夏が来たんだ。
青猫を引っ張り出して、オイルアップする。ペネルーブが行き渡ると、チェーンがしなって、弾力を増していく気がする。昨日と一昨日、通勤に自転車を使わなかったせいで、身体がなまって仕方がない。荒川の土手に向かう。無風の良いコンディションだ。日焼け止めを諦めたせいで、腕がゴルファーのように黒い。そこにじりじりと夏の太陽が照りつけて、汗が流れ落ちる。ペダルを踏み込むとひゅん、と耳元で空気が鳴る。ケイデンスを80に保って、ペダルをまわし倒す。LSD*1なんてあったものではない。とにかく身体をむちゃくちゃに動かしたかった。草いきれに混じって河面を渡る涼風が鼻をくすぐる。
そのうち心拍が一定に落ち着き、呼吸が規則的になる。身体がマシンと一体になって推進力を生み出し、音もなく空気をかき分け、ひたすら距離を稼ぐ移動体になって川下へ向かう。昨日までの不摂生が汗になってすべて流れ出してくれればいいと思う。そして僕は軽くて透明な何かに変わっていってしまえばいい。そういうことを考えているとき、しっかりとメンテしてムチのようにしなう自転車に乗っているのは気分が良い。
約40km、ペダルを踏み倒して帰宅。おそらく700kcalくらい使ったのではないだろうか。汗にまみれた身体でシャワー室に入り、冷たくて透明な、水晶みたいな水をたっぷりと浴びる。至福。
冷やしておいたサンペレグリノを開けて、一気に飲む。

*1:ロング・スロー・ディスタンスのこと。ゆっくりと長い距離を漕ぐ、自転車やマラソンのトレーニング法で、筋肉をつけるというよりはウェイトを絞ったりコンディションを整えたりすることを目的にした練習。