ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

コイスルヒトタチ。

昨日は新人たちの部長懇親会で、気仙沼と利根田君の面倒をみている僕も呼ばれた。最近「金がない」を連発する嫌な大人になり果てていたので、なけなしの軍資金をかき集めた上で、足りない分は部長にたかるつもりで参加。
だいたい管理職との懇親会なんていう名目で開かれる飲み会が面白いはずもなく、それが予想できる時点で面白い面子を確保するべく席取りをするのが常道なのだけれど、出遅れたのが運の尽きで、打ちあがらない花火を持て余すような会は最後までしょっぱいままだった。
解散と同時に地下鉄に潜り、電車を待っている間に気仙沼から電話。
「何してるんスか、木下さん」
「知らねぇ」
「今、部長と差しなんスよ。木下さん助けて下さい」
「他には誰もいないの?」
「今、呼んでるところっス」
「おばか。逃げ遅れた上にみんなを巻き込むってか」
気仙沼は見た目可愛らしい新人女子なのだけれど、中身はおっさんで、頭は悪くないが脇が甘い。典型的な迷惑かけキャラである。仕事はできるから、なるべく放ってある。
この人は遠距離恋愛の彼が居て、最近近距離で付き合っている新彼氏がいる。遠距離の彼とは清算が済んでいない、ていうか自分の心境変化を知らせていない。いまさら綺麗には収まらないだろうし、強引に纏めれば切り口はギザギザなまま、しばらく色んな人の心に黒い傷跡を残すだろう。無聊を慰めるにしてもやり方が稚拙だ。気仙沼は僕がそんな事情を把握しているのは知らないから、無邪気におっさん言葉で僕をいじっては楽しんでいるけれど、僕は、気仙沼とは距離を取っている。何故って、何となくよくないヨカンがするのだもの。
喜んで絡んでいるのは小牛田さん。若い可愛らしい女子となると、目尻を下げていそいそと打ち合わせに連れ立って行く。僕はそれを、幾らかドライな気分で見送る。
何故かこのあたりを含めた今年度の帝建新人の恋愛模様情報を、僕は包括的に知ってしまっている。色んな恋のかたちがあり、様々なペースの成長がある。まるで「カラフル」のプラプラみたいな気分で、僕はそれ達を俯瞰している。
結局その夜は早く帰るのを諦め、部長と気仙沼と、いつの間にか集まってきたオジサマ達と深酒した。