ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

ひみつ基地@帝都・池袋

4月の雨はやわらかく千年帝国(empire millenium)の帝都を濡らし、東池袋の路地に住むホームレスの親父を舌打ちさせる。その親父の脇をすり抜けて雑居ビルの裏口に入り、服についた雨粒を払う。6階のネットカフェは人影もまばら。疲れた顔でモップがけをしていた女性の店員が、あらいらっしゃい、といって微笑み、カウンターに入る。人工的な暗闇が永遠の深夜時間を約束するはずのネットカフェも、なんとなく営業疲れしたライブハウスの昼間のような雰囲気。舞台裏が露呈するこういう時間が好きである。まるで普通に歩いていたのに空間の隙間から本当の世界をのぞいてしまったような。
「やあリン、今日は暇みたいだね」
「ご覧のとおりよ。雨の日の昼間なんて、こんなものね」
「なるべく煙草くさくないところがいいんだが」
「ネットカフェでヤニくさくない席を望むなんて、あんたもぐり?」
「最近のトレンドじゃないか。なんといったって東日本旅客鉄道株式会社も駅全面禁煙に踏み切るご時勢だ」
昨日打ち合わせをしたJRの社員二人のことを思い出して、僕は少し笑った。マルクス兄弟のような二人は、会議室に入るなり打ち合わせ資料と一緒にアルミの灰皿を取り出して、煙草に火をつけたのである。打ち合わせ内容はたいしたものではなく、最後はガーラ湯沢の良いところと悪いところについて熱く語りあうという、よくわからない終わり方をしたのだった。
「42番があいているけど」
「ありがとう」
リクライニングシートを倒し、オットマンに足を預ける。僕はたまにここにこもって漫画を読んだり、考え事をしたりすることがある。家にいても一人なのに、それとは別に所在を隠せるひみつ基地めいた場所を確保することが大好きなのだ。
ふと思いついて最近気になっている動画を探して再生する。

m-flo loves MINMIだという。別にそんなのはよくって、はるか昔の深夜番組を思い出すのである。
それはおそらく20数年位前のことで、当時売れ出した田代まさし(!)が出ていた。それ以外の出演者はみんな子供で、子供が大人の役をするのである。夫婦生活に疲れた20代後半の奥様とか、やり手のサラリーマンとか、人が良いばかりで何もできない同僚とか。で、昼メロっぽい不倫劇を繰り広げるっていう内容だった。今思い出しても傑作で、もう一度見られないかとおもっているのだけれど、そもそもどの放送局が製作した何という番組かというのもまったくわからない。誰か情報を教えていただけないでしょうか。