ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

お仕事のスパイス

今の職場は、チームで動くっていうより個人個人で動くことが多い。大事な打ち合わせだと思うのに係長は別動だし、誰が責任取るのさ!とか思いつつ、設計条件の調整だとか執行計画の報告だとか、いちんち電話してるか、打ち合わせしてるか、そうでなければ出張で山手線をぐるぐる*1してたりする。
そんなチームに入ってきた新人の中安楽女史。いきなり込み入った案件を担当させられて凹むかと思いきや、上手く乗り切っている。最近の新人は優秀だと思う。
教育係になったのは設計や調整について右に出る人が居ないくらい詳しいベテランの虫掛君。二人とも鉄人28号を思わせる立派な体躯で、揃って仁王立ちになってたりすると何かほほえましい。PX団に立ち向かっていきそうで。
虫掛君も中安楽も両方酒好きで、毎晩職場の最寄り駅のキャバクラに行っちゃキャバ嬢といちゃいちゃしている。虫掛君はわかるけど、中安楽は楽しいんだろうか?(僕はキャバクラは嫌い)と思いきや、こないだ店を覗いてみたら、その巨大な体を折り曲げてキャバ嬢の中に混じってガールズトークしてる。ふーん、こーゆー楽しみ方もあるんな、キャバクラって。
呑んだ次の日には、中安楽は決まって遅刻しそうになって駆け込んでくる。一応スクエアな会社だし、今から出張所感覚に慣れてしまうのもまずいなーと思ったりしつつ、虫掛君も風紀教育(笑)には手を焼いてるみたいなので、こないだ久々に係全員そろって親睦会をしたとき、赤羽でホルモンをつつきながら小言した(←おっさん)。
中安楽は一応神妙な顔をしながら聞いてくれていたので、これ以上抹香臭い説教すると虫掛君の立場的にも良くないよなーとかアルコールの染み渡った脳で考え、よーし、じゃあ明日、どっちが早く出勤するか掛けるか、というととたんに笑顔になる。こういうとこ可愛らしい。
「何掛けます?」
「じゃ北千住のサニーダイナーのチーズバーガーセットを係人数分。駅ビルじゃなくて本店の方な」
「わかりました。木下さん何時に来ます?」
「おバカ。それを決めたらつまらんでしょうが。言っとくけどこれ、真剣勝負な」
「負けませんよぉ」
木曜日の朝。普段より30分も!早く出勤した中安楽は、すでに仕事を始めている僕を見つけて、「大人げないですね木下さん」とため息をついた。昼休みが楽しみだね〜。とかいっているうちに仕事が立て込み、昼外食するような感じではなくなってきてしまった。
「今日は無理っすかね」とにやにやする中安楽。
「いーや、僕らにはテイクアウトっていう素敵な手段が残ってるじゃないか」
「えー」ぶーぶー言いながら中安楽は降りていく。がんばれ鉄人。僕らの昼ご飯は君の手にゆだねられた。
と、間もなく両手にバーガーセットを下げて戻ってきた。
「どうしたんですか。早いじゃないの」
「はい。事務所の営繕から自転車を借りました。あと店には事前に連絡を入れてセットを作っておいて貰いました」やっぱり最近の新人って優秀じゃないか。こういう機転が利くって本質的に頭いい人だと思った。
…その次の日の金曜日、大遅刻をやらかした中安楽。大物である。

*1:足立区に詰め所、現場が港区、事業調整が新宿区。効率が悪い。