ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

だんだん。

4月1日にはもう、元の生活に戻っていた。地震がくるたびに山鳴りがしていた仮設住宅での2か月は、もう過去のもの。窓さんと毎日出張のときにしていた馬鹿話も、現業さんに「嫁の来手がいなくなるから、大概にしときなさいよ」と大笑いされた手料理自慢も、なんだか夢の話のよう。
気がつけば板橋物置部屋で、去年の今頃していたようにスキー板にワックスを掛け、憂鬱な月曜日には遅刻しそうになりながら出勤し、友達の誘いに苦笑いしながら酒を飲みに出かけている。何事もなかったかのように。
でもふとした仕草や嗜好の変化に、あの仮設住宅住まいの残滓を見る時がある。ゴミをこまめに捨てるようになったし、拭き掃除を欠かさなくなった。旬の食材に敏感になり、ビール一辺倒ではなくなった。
あれ、オレってこんなだったっけ?と考えることしばし。人間は変わる。変わっていける。変わってしまう。少しずつ、その時々の環境や、付き合っている人が、僕を粘土細工のようにいじっていく。
行き着くさきが、高田純二みたいだといい、と思う。