ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

木下先生の部屋。

「だ、誰?」
「誰っていうあなたは誰…かと思ったら中目黒君か。どうしたんですかその短髪は」
「あ、木下先生。いったいどこに隠れていたのですか」
「いやちょっと帝健の方がばたばたしていてね。半年ぶりくらいかな」
「多分、それ以上です。もういらっしゃらないかと思っていましたよ」
「そのつもりだったんだけれど、狸穴から依頼があってね、しばらくカウンセラーとして残ることになった」
「え、そうなんですか」
「そう。僕が被災地に行っていたの、中目黒君に話したっけ」
「被災地ってどこに?」
「沿岸部。詳しくは云えないけれど、そのときの経験を活かして生徒の相談に乗る人になれということらしい」
「え、じゃああのいい加減な講義はもうしないのですか」
「カリキュラムからは外れるね。ただ、気が向いたときにここでやる」
「ああ、じゃああの噂は本当だったのですね。生徒の親から強烈な後押しがあって、光村先生が辞めさせようとしたのをとめられたっていうのは」
「知らん」
「なんだか政治家も絡んだとか」
「全く知らん。紐付きっていうのは僕がもっとも嫌う立場だからね」
「なんだかんだいって、結構しがらみに捕まっちゃってるのではないですか先生。世間に無関係な漂泊の身とかゆっちゃってるけど、年齢的にもナイスミドルなわけで」
「そんなの、気の持ちようさ。何とでもなるし、どこへでも行ける」
「…そんなものですかね。で、今日は何を」
「掃除」
「前から思っていたのですけれど」
「何だね」
「木下先生気分転換の掃除をするために汚しているでしょう」
「そうかな。そうかもね」
「何か、今日はご機嫌ですね」
「気分が良くて何が悪い?」