ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

戸惑いの午後。

外に出たら夕焼けだった。
本社で打合せが終わったのが17時、昼ご飯を採り損ねた胃袋は海産物を要求していた。馴染みの寿司屋が開く時間には早い。馴染みでない寿司屋には入りたくない。あまつさえ区部北辺の職場には残業が控えていて、新宿を彷徨(うろつ)く余裕はない。海老の雲呑が美味そうな麺屋の扉をくぐった。
4つの寸胴にいっぱいの湯を沸かしている店内は曇っていて、直ぐに汗が吹き出した。注文を訊かれて雲呑麺を頼んだはいいが、海老雲呑にするのを失念した。
結果、寿司でもなく、海老でもない、当初の目論見の跡形もない、時間外れの昼飯を汗だくになりながら啜り込むことになった。途中で訳もなく笑い出したくなり、渋面を作って押さえ込む。斯様にして時は流れ、ひとは老いる。