ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

こんな夢を見た。

平日の朝なのに、僕は地下鉄のホームで通勤客を見送っている。隣には涼音が立っている。僕らはまるで、通園する園児を見送る両親のように、時折背伸びしたりしながら、人の流れを見ている。
有楽町線桜田門駅は、官公庁最寄りの駅ということもあって、ダークスーツだらけである。彼らは常に目的にむかって動いているので、到着した地下鉄のドアから溢れる人は呆れるほど速くどこかへかき消えてしまう。その後に残るのは、食べものが入っていない冷蔵庫のような風景だ。
涼音はこの夏お気に入りのサマー・カーディガンを羽織っている。薄青色のそれと、明るい芥子色のスラックスは、桜田門駅には似つかわしくなくて、非現実な感じ。
ねえ、それって何?
これ?これはね、通行証。うちの職場、ICカードとかじゃなくアナログ確認なんだ。つまり、現役警察管の目視。
ふーん。それで、あなたは何の仕事をしているの木下未来。
それは、秘密。
秘密が多いのね。
秘密があったほうが、人は興味深く見える。
うさんくさいわね、と言って、涼音は笑った。