ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

ソロー的隠遁譚。

梅雨の合間の晴れた日の夕方、こっそりと屋上に上る。暑くなく寒くもないいい季候で、帝都は一日を締めくくろうとする夕暮れ的活気をここまで響かせてくる。折れた骨を気遣いながら、あぐらをかいて背伸びする。コルセットが音を立てる。
テレビを観るのをやめて久しいので、時間がたっぷりある。では何をするかというと、本を読んで、ご飯を作り、医者に眉をひそめられない程度の運動をして、掃除して、酒を飲んで寝る。この繰り返しである。この僥倖的長期休暇をどう活用するかのプランが無いわけではないが、声高に宣言するほど厚顔でもなし、まあ、ゆるゆるとやっているわけである。高邁な精神など一切なし。流れにゆだねる感覚の楽しさを贅沢に味わっているこのイレギュラーな時間も、あと少しで終了である。その先は喧噪の奔流に飛び込む、いつものあれが待っているのだが、そんなことを今から想像するほど勿体ない時間を過ごすつもりはない。
こうやって外から世界を眺めていると、なんと雑音の多いことか。無責任なイノセンスを纏って、あるいは絶対善とスノビズムのカクテルに酔いながら、他者の批判を垂れ流す。目的はよりよい世界に向けた改善や誘導ではない。他者を打って自身のスタンスを確認する。自分をかわいがる、自分を可愛そうがる。うんざり。うんざり。うんざり。ホールデン・コールフィールドならなんていうだろう。
なんてぇいうことをふと思ってしまうあたり、暇してしまっているのだろう。残りの休暇は、なるべく無駄な時間を作らないようにすごそうとおもいます。中学生の夏休みに向けた決意的な眉の若さで、割と本気で思っているのでした。蜂蜜色の風に吹かれながら、夕焼け空を見上げて。