ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

野球小僧

金曜日、南斉北山で、歌舞伎町で待ち合わせ。北山と僕はその日の仕事場が近かったので、パナソニックのショウルームで落ち逢ってから歌舞伎町の最深部に。目指した先はバッティングセンター。スコアの良い2人が悪い2人におごられるというルールで勝負である。渚は初心者なので、バットに当たれば前に飛ばなくても1カウントにした。
渚は立ち居振る舞いが可愛いタイプの女性で、バットと一緒に上半身が動いてしまい、端から見ていて危なっかしくてしようがない。その女子大生めいた仕草を見ながら北山がぽつりと言う。「えーと、あたしも女なんだけど、バットに当たればっていうカウントに…」間髪入れずにケツを蹴り上げられる。この女、どこで習ったか知らないがえげつないスウィングでバッコンバッコン打つんである。
特別ルールのせいで渚は思い切りスコアが伸びて、リトルリーグで鳴らしていた南斉は崩れるはずもなく、北山と僕が被ることになった。北山は上手くいっていないパートナーとの久しぶりのデートの資金が目減りするといって顔を曇らせる。
「知らんよ、おごって貰えあっちに」
「そういう関係じゃないの私たちは。割り勘が基本なの」
「じゃ我慢だね。トータルボリュームを減らすしかないよ」
梅雨明けの東京は蒸していて、歌舞伎町のイルミネーションに照らされて滑り降りてくる雨粒が銀色に光る。風林会館の向かいのブロック、無料紹介所の脇を入ったところにある上海料理屋で打ち上げ。渚は終始ご満悦で、資格試験でつぶれてしまう夏休みについて、愚痴めいた話を結構楽しそうにしていた。南斉はシニカルな話し方で僕をいじっていた(この男とは一昨日、日本に軍隊が必要かで大議論したばかりで、今日はそういうのやめようって話になってた)。ビールが美味しかった。
額の縦皺の消えない北山の分もある程度被って僕が損する形に。そのうち南斉に勝って今日の借りは返そうと思う。
って、すごく健全なスポーツ男子っぽい週末じゃね?
じゃね?じゃない。本当は全っ然、そんなキャラクターじゃない。

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