ひみつ基地

ひみつ基地暮らし。

出来事

凍結世界/海草世界。

前日までウォッシャー液を不凍液にしたり、チェーンを装備したり、寒冷地化されたレガの最後の仕上げにラッセル用のスコップを放り込んで、準備は完了した。 次の日、朝2時にレガに火を入れて出発。3時に虫掛君と合流。後はひたすら運転。折からの寒波は日…

ノンデルとグレテル。

青猫は今日も、玄関から出かける後ろで壁にもたれかかり、黙って見送っている。 ここ一週間ほど、自転車通勤をしていない。理由は簡単、道路交通法第65条第1項に違反するわけにいかないからだ。つまり、呑んでる。一週間ほど連続して。 件の出張は年度末にチ…

そのボリュームで。

水曜日の夜である。 新宿駅南口から鉄道省本部の黒々したビルの足元を鼠の足取りのように細々と代々木方面に抜ける路地がある。バラック然とした家屋の軒が覆い被さるようなその小路を稲妻型に抜けようとするとかならず躓く防火用水のバケツがあり、なんだよ…

ドリフター。

馬場崎は荒れていた。 週末金曜日の「クリアライトハウス」は観音崎あたりに艇庫があるらしい2、3人の大学生ボート部員が変な替え歌を唄っては大笑いしている以外は、僕と馬場崎しかいなかった。 「大体、深刻ぶってるやつに限って、世の中ナメてるんだ。そ…

あの花。

「なに」 「ん?」 「なによ、そのにやけ顔」 指摘されるほどに唇の片方だけつり上がる。涼音はこの顔を「クラーク・ゲーブル気取りのばんばひろふみ顔」と呼んで、薄っぺらい表情ね、とくさすのを忘れない。 「知らん。そんなににやけているかな」 「散歩中…

ぶれーどらんなー

土曜日、0600起床。レガに火を入れ、朝霞に向かう。 駐車場でお茶を飲んでいたら、隣にカローラが滑り込んでくる。 「よう、木下先生」 「重先生、久しぶり」 今日はオフトレで、室内リンクでインラインスケートである。インラインはスキーに比べてセンター…

木下先生の部屋。

「あーもー、今度は何を買ってきたのですか先生。こないだ教頭が部屋覗いていきましたよ」 「中目黒君いいところに来た。ほら」 「お、秋味ですか。そして何ですかこのいい香り」 「ガーリックオイルを作っているんだ。ほら中目黒君、トマト湯剥きして」 「…

木下先生の部屋。

「木下先生、何なのですかこの騒ぎは。廊下のこっちまでがらくたをひっくり返す音が聞こえているのですけど」 「やあ中目黒君、久しぶりだな。ちょっとね、捜し物をしていたんだ」 「もはや狸穴に仕事しに来ていないでしょう」 「いや、仕事も追々するつもり…

舵を取れ、ぶつかるぞ。

土曜日は週末100キロランをすることに決めていたので、午前中にハウスキープの諸々を済ませて荒川を上流に向かう。前回の失敗を踏まえ、今回は昼ご飯をしっかり食べて出発。県境を越え、とにかく50キロ遡れるところまで行ってみた。微妙に距離が足りず帰って…

素晴らしい世界。

夕立が降る、と言われながらもここ数日直撃を避けて行動できていたので、何とかなるだろうとタカをくくっていた昨夕。早めに事務所を出るとブロンズ色の風が木立をなぶっている。 こりゃ、早く帰らないとひと雨来るな、とケイデンス高めで走り始める。赤茶け…

こんな夢を見た。

みどりが濃いベランダである。 ボリュームのあるイワヒバの鉢が吊ってあって、何か甘い汁でも出ているのだろうか、ハチドリが群がっている。 涼音が青猫のフレームを雑巾がけしている。白い腕がときたま緑色に見えるのは、周りの緑が映えるのか、それとも静…

水無月トラジディ。

例年よりも相当早く梅雨に入った今年である。いまのところ、放射線も派手に高い数値を出すわけではないので、多少の雨なら気にせずに青猫で出勤することにしている。 「木下さん、何ですかそのスパイダァマンみたいな格好は」 「ああ大家さん、おはようござ…

板橋物置部屋退去。

どうもいけませんな、と内装業者が云う。床下に水が回ってしまっておりますので、内装全部遣り換えしないと、カビが生えてきます。 某企業の某資産を保管している板橋物置部屋である。先の震災で起こった溢水事故で、倉庫の約半分が水浸しになり、後処理が大…

帝都雨模様。

今日も放射性物質を含んだ雨が降り注ぐ東京。 朝6時、防災無線から防空サイレンが鳴り響き、今日の放射線量が無表情な女の声で放送される。整然と並んだ白いビルの間を奇妙なこだまを伴って流れるその音が消え去った後に、かさばる防染服を着込んだ人間がそ…

脳内音楽再生装置。

ここのところ、この曲が朝のクルージングのBGM。気に入った曲は脳内でほぼ完璧に再生できるので、ウォークマンとかipodいらずな木下なんである。

街を好きになる。

急な坂道を途中まで下り、右手にある建物の敷地に入る。骨の曲がった傘をたたむと、埃のにおいがした。 昔は青かったであろうペンキが紫外線でひび割れ白くなり、錆で浮いちゃっている階段をかんかんと音を立てて上る。安普請のぺらっぺらなドアを開けた時、…

コントロールを取り戻す。

通勤路に自転車の人が増えた。 木曜日の朝、そんなカリカリの格好しなくても…ってくらい気合の入った、おそらく自転車には乗りなれているであろう御仁が岩淵水門のゲートで僕を追い抜いていったので、こりゃいいや、とスリップに入った。折からの冬型で吹き…

板橋物置部屋の水没。

金曜日のこと。 昼過ぎに地震があったときはオフィスで書類決済に頭を痛めていた。グラングラン揺れるオフィスで及び腰になっている副部長を席に押しとどめて協議印をもらい、部長に案件の説明をしようとしたら「お前という奴は。」と苦笑い(苦9割+笑1割)…

遠回りして帰ろう。

20時30分に職場を出る。重たい鉄の扉を開けると、すぐに圧倒的な冷気が僕を包み込んだ。青猫もキンキンに冷えている。ついたため息までご丁寧に白い蒸気になった。 冬である。 クリートを嵌めると乾いた音が響いて、僕は河川敷に向けてペダルを回し始めた。…

らぶとらぶる。

梅雨くらいから調子の悪かった板橋物置部屋の通信電装がついに動かなくなった。頻繁に飛ぶので、ひょっとしたら複雑に入り組んだデバイスドライバ群が悪さをしている可能性もあるな。と一旦Cドライブをまっさらにして、OSをリインストールしようとしたらそこ…

げしゅたると萌壊。

先日のこと。 帝建の仕事で、某会社の某機密扱いの資料を借りに秋葉原に行ったんである。出張内容自体はミルク・ラン、所謂朝飯前の仕事なんだが、ときあたかもAPEC開催の準備で帝都中がピリピリしている時期で、資料の持ち出しにもずいぶんと制約を受けたし…

チョコレイト同盟。

円高が進んだ次の週明けには、必ず中央線のダイヤが乱れる。誰が言ったか知らないが、ドル円が15年ぶりの高値を更新した月曜日、案の定人身事故が起こった西荻窪のホームは立ち往生した通勤客でごった返していた。 ゼミは今日はない。教務の呼び出しも就職報…

あらしのあと。

ドラ・ド ヨングの長編ともいえない長さの(あるいは抄訳だったのか?)岩波少年文庫のが読みたい気分になっている。「あらしのまえ」とセットで。「おかあさん、ゆきがふってる、ゆきがふってる」と歌うようにいったのは誰だったか。あらしの前 (岩波少年文…

そのとき、風が。

冬型の気圧配置のせいか、最近向かい風に抗って走ることが増えた通勤路である。 自転車を走らせようとすれば、様々な負荷に耐えなければならないが、空気抵抗もそのひとつ。スピードを上げればあげるほど粘っこく絡まりつく流体と対峙することになる。 水ほ…

3連休@板橋物置部屋。

キャンティっていうイタ飯屋がある。笹塚が本店らしいんだけれど、僕がよく行く山梨にいくつか支店があって、食事が必要な打合せなどに活用させていただいていたりする。山中湖畔のキャンティ・コモとか、気持ちいいものね。 この店、パスタもピザもうまいが…

コイスルヒトタチ。

昨日は新人たちの部長懇親会で、気仙沼と利根田君の面倒をみている僕も呼ばれた。最近「金がない」を連発する嫌な大人になり果てていたので、なけなしの軍資金をかき集めた上で、足りない分は部長にたかるつもりで参加。 だいたい管理職との懇親会なんていう…

こんな夢を見た。

「ああ、梨元さんね」 不二はパスタに絡まりきらなかったアンチョビを器用にフォークですくいながら、ため息混じりに言った。 「何だか、ちょっとおかしくなっちゃったのよね」 ここは帝建の入るビルの公開空地を見下ろす「アルル・バッジオ」というリストラ…

きりきり。

朝、出掛けにとほ宿ネットワークのHPを見ていたら(このあたり現実逃避のにおいがぷんぷんしますね)、吉里吉里がリンクされていた。 この宿には愛着があって、先輩が以前2度ほど行ったことがあるという話だけを頼りに2007年夏にふらりと寄ったら、ご主人は…

なにかいいことないかラ・ニーニャ。

先週のこと。 火曜日、仕事を定時であげて、マカオさん家の前にある串焼き屋に、マカオさんと奥様と行ったのであるが、その道すがら。薄暮に染まる空は、薄桃色からサーモンオレンジに渡るグラデーションで、最初期のCG―アソビが無くて破綻を拒絶する、X6800…

うつろいのいろいろ。

水曜日。馬場ちゃんとの貸し借りを、多少アクロバチックな会計処理で精算。来週にはまたひと山ありそうなので、多少上積みして備える。馬場ちゃんは苦笑いしながら「またやるの?」と言うのをこちらも渋面で「そう、またやるわけ」と応える。 北山のお祝い?…